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990403/04 JA09AW Dep. RJSA 15:00−15:19 Arr. RJSA 0h19m
A09AW Dep. RJSA 08:24−12:24 Arr. RJSN 4h00m
4月ともなると、関東は春だ。東北には春の兆しはあるのだろうか。

いつぞや、5月の連休に北海道まで飛んだとき、弘前城趾は桜が満開で、青いシートがあちこちに広げられ、お花見の陣取りをしているのが上空からもよく分かった。1ヶ月は違うのだ。

白神、八幡平、栗駒、鳥海あたりの、春を迎えるブナ林の様子はどうだろう。

雪の森は、新雪でないとその白には汚れがあって、美しい感じが得られないかもしれない。しかし場所を選べば、木々の冠雪は地面に落ちて、幹の周辺のみ輪のように融けているのかもしれない。それも春だ。

ちょっと撮影には早い気もするが、出かけてみることにした。関宿滑空場から約3時間飛んで秋田空港に降りた。ターミナルで遅い昼食をとった後、雲は結構あるが、隙間もあって陽が差すところもあるから、田沢湖周辺に出かけてみることにした。

エアボーンして左旋回したとたん、何じゃ、これは、と覚悟した。そこに雪が降っているのだ。あちこちにある雲の下には降雪があり、その一部が流れて風防に当たる。飛行場標点からせいぜい3kmとは離れていないのに、しかも気象現況は十分なVFRのデータだったのに、だ。

降雪は、雲の下に太い柱のようになっている。その柱をスラロームして南の陽が当たっているエリアに抜けられないか、ちょっと努力してみた。努力しすぎると、時間経過とともに、さらに巨大な雲が到来し、空港に帰れなくなる可能性もある。

地上にいて、見上げて柱のような降雪を見るのは楽だ。その見上げる俯角が立体感をもたらす。しかし、上空にいる。雲は低く、それをレベルで見ている。遮るものが多く、風防にもキラキラと当たって、先を見通すことが難しい。

大曲


松ヶ崎


中高屋、上高屋

あれは9月中旬のアラスカ・コロンビア氷河だった。晴れた日、セスナ172で氷河の撮影をしていたのだ。行く手上方に、こんもりした積雲があった。オーストラリアなら、オッ、上昇気流と小躍りするような形だ。その下を通過したとき、心臓が凍った。何の降雪現象も視認していなかったが、主翼の前縁、ストラット、前半分が一瞬にして白くなったのだ。

エンジンのアイシングは、軽いヤツなら時折経験する。しかしそれは、零下になって、乾いた気象ではまずありえない。凍るべき水蒸気がないからだ。しかも早期に認知すれば、キャブヒートを使って簡単に対処もできる。

この主翼へのアイシングは程度が違う。氷となって張り付いてくれたら、主翼がその断面型を維持できなくなって、主翼でなくなってしまう。

幸いにして、10数秒でこの雲の影響下から逃れられたのであるが、大陸の気象には、何と遠慮というものがないのか呆れたのだ。

「だめだねぇ、帰ろうか」と決断し、着陸することを空港の管制塔に伝えたら、ちょうどエアラインが到来するところであった。

続いて着陸訓練をするビジネスジェットがタッチ&ゴーをリクエストしている。しばらく待たねばならない。降雪の柱を抜けるスラロームを繰り返した。この時期、秋田の空は冬なんだね。

翌日朝、出直した。

田沢湖周辺はやはり雪だった。雪の角館、大曲と玉川に沿って下り、雄物川に合流したところで、だいぶ写真を撮った。神宮司岳、土筆森山といったせいぜい200数十mの山が、この地に立ちはだかって雄物川水系にブレーキをかけ、この盆地を形成させたことがよく理解できるシーンだったからだ。水田に被る雪も、手前と奥では濃さが違う。陽の光は春である。

その先、雄物川が流速を落とし、うねって三日月湖をあちこちに残すのを撮って、河口から北上して男鹿半島へ向かった。

一ノ目潟、二ノ目潟、三ノ目潟、という典型的な火口湖が連なるのを見た。この半島の突先にある戸賀湾も丸く、じつは零ノ目潟か四ノ目潟か、噴火口が海没したに違いない形をしていた。

そうして東北地方の海岸線を伝い、新潟を目指した。地上を観察しながら、ゆっくり飛ぶ。直線というにはあたらない、やや曲率をもったカーブを描きつつ続く海岸線が見通せる。そこを羽越本線と酒田街道(国道7号)がパラレルに走っている。が、その果てしないラインが、ポコと迂回する所があった。迂回しているのはバイパスで、それが輪郭を描く集落は、目立たぬ旧道に密着した街道町の様相であった。鉄道はその手前から山に入っている。本荘市の松ヶ崎の集落だった。

さらに南下する。本荘の町を過ぎると、海岸林の中にギュッと固まった集落があった。地図には中高屋とある。さらに同じような上高屋という集落も表れた。

たとえは悪いが、ライオンの襲撃に対して固まって身を守るシマウマの集団、といった感じだ。外敵は、ほかならぬ厳しい日本海なのだろうか。しかし、この海に依拠して生きてきたのも事実なのだ。集落の形成には何かしらの意図があるはずである。それはこの集落にとって何だったのだろう。

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