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021127 JA09AW Dep. RJSS 09:18-11:03 Arr. Ohtone 1h45m
JA09AW Dep. Ohtone 13:50-15:00 Arr.HondaOkegawa 1h10m
JA09AW Dep. HondaOkegawa !6:18-18:15 Arr.HondaOkegawa 1h57m
仙台?ホンダ?

東北新幹線やまびこ27号で、仙台に機体の回収に向かう。通常11,000円のホテルを当日限定インターネット予約で6,000円でゲットし、泊まる。同行者、スダチと中澤さん。

機体の持ち帰りを急いだのは、メガネ(老眼がひどく進んでいる)が行方不明になって、機内に忘れてきたのじゃないかと思ったことと、本番の東京夜景空撮を早いウチに実行したかったため。仙台での夜景空撮から、撮影のデータを取得できたので、それを実証したかったわけ。

で、東京ナイト空撮後、どこに着陸? 再び仙台?「そりゃあんまりだぜ。ホンダ桶川にしたら?ちょっと話、してみる」と中澤さん。

「でも、09AWのためだけに夜間照明を依頼したら、無茶苦茶高価な着陸料・停留料になるんじゃないの? プライベートの飛行場だしさ。あそこは、ホンダのクラブ員か、事前に何度かナイトのタッチ&ゴーをするとか、承認を受けたパイロットだけ、って話じゃないの? あそこのセスナで改めてナイトの訓練を受けなければならないのなら、無理だね」

なんだか、ホクはとても腰が引けていたのだ。施設の維持にとてもお金がかかるらしい。午後7時に着陸し、1泊したら・・・・・、4万円・・・・・?。こりゃ大変だ。 一方、延々2時間も飛んで、朝出発した遠い仙台空港に戻るのも芸がないし、天候のリスクもあるだろうし、疲れる。

でもなぁ、仙台の南エプロンからじゃぁ、たとえ着陸料が1,000円、停留が850円にせよ、市内へはタクシーしかないし、往復タクシーだと1.5万円、宿泊7,000円、燃料往復で1万円+、やっぱり同じようにコストがかかる。思案のしどころだ。調整は、中澤さんにお願いして、ともかく大利根に機体を戻すことにした。


9時過ぎに仙台を離陸、1時間45分(向かい風強くGSは時に60kt台)かけ、GPSの示す直線ルート、阿武隈山中を真っ直ぐ飛んでダイレクトに大利根へ。例によって、15分ほど先行した中澤セスナには、結局追いつくことはなかったが、非力な遅いモグラでも、大利根到着時には5分差までつめたのだった。

大利根から近い食堂に昼飯をとりに行った。そこから木更津駐屯地に電話。木更津管制圏内小櫃川河口の撮影が、前回は航空祭前日だったが、曇って思わしくなかったので、再度トライできないかと思ったのだ。


「第1ヘリ団の訓練が行われている平日ですが、5分間だけなんですが」と、管制圏内(敷地の隣だ)立入が可能かどうか、ちょっと調整してもらおうと思ったのだ。こころよく受け入れていただき、次の飛行ルートが決まった。


新宿


東京・神田

汐留。銀座


東京ナイト


芝公園
大利根−木更津−大多喜(時間があれば)−千葉−ホンダ桶川。ま、特別なことをするのだから、明るいうちに一度着陸して、飛行場の関係者に会い、一応のローカルルールや必要な諸注意を聞いて、それから本番ナイトをすべきだろうと考えたのだ。

伊藤さんとの再会

ホンダの教官の伊藤さんが待っていてくれた。彼は、米国オークランドにあるシエラ飛行学校に、同じ時期に行っていた「同期」あるいは「ちょっと先輩」である。

シエラは、大げさにいえば入学試験のある飛行学校で、まず英語力が試され、スッとコースに乗れないと、3ヶ月は英語学校に行かされたのだった。ボクはコースに乗れた(マニュアルを読む程度の数学がヤバかった)が、自家用でも最初の4週間は飛行機に触ることはなく、座学だけだった。

留学生の半数は黒人だった。学生はアフリカ諸国の国費留学生や、出身国の王侯貴族の息子という感じの人たちで、みな余裕があった。テニスをすれば、デビスカップの選手じゃないかと思ったし、車を買ったと聞けば3万ドル(250円時代だ)で、肩身狭い思いをしていたのは日本からの私費留学生ばかりであった。

国家の経済状態とは全く逆転した姿がそこにはあった。現在でこそ、たぶんナイジェリア航空の747機長とか、モロッコ航空の737機長とかだが、忘れた頃に、2〜3年に1回か、夜中や夜明けに国際電話してくるヤツもいる。

でも、その机を並べた昔の心細そうな日本人の仲間も、20年以上経ってみれば、結構エアラインやヘリ会社に就職している。自家用で止めたのはボクだけだ。

話がそれた。「懐かしいね」と久しぶりに会った伊藤さんに、一応の諸注意を聞いた。

機体性能の端から端を全部使い切る

真っ暗闇の中で飛行場が発見できるだろうか、ちょっと気になったが、今回同乗のスダチは、何年か前に、滑空機動力の免許を手にしたあと、自らの技量向上策として、クラブで109Bを借り、大利根・ホンダ桶川双方の会員である友人を誘い、ここでナイトのタッチ&ゴーをしに出かけたことがあると言っていた。とても心強いものがある。

一般的に、フライトが面白いと実感できるのは、機体性能の端から端を全部使い切った、と実感したような時だろう。

滑空比43と言われれば、43で飛んでみればいい。ほとんどのケース、グライダーではこれができない。機体がナイト可の承認を受けていれば、それを体験してみればいい。実体験すれば、操縦者としての領域が広がった実感が必ずある。これはなかなかのものだ。

ふつうは、マージンにマージンを重ね、誰でも出来ることしかしない。エンジンがついていると、いろんなことを試みることが可能だから、ちょっとした意欲と、ちょっとした学習と、ちょっとした友人先輩関係を探るだけで、ピュア機にはない各種の「初体験」が実感できるのだ。特に資格取得後の、さらに少しずつ領域を広げていくという部分では、こうしたことはとても大切なことに思える。

光の海の出現

午後4時18分だったか、桶川を離陸した。まだ陽は十分にある。「パイロットは日没を2度見る」といったのは、リンドバーグだった(と思う)。地上で陽が暮れても、上昇すれば、再び太陽が拝めるのだ。

フライトプランのルートは、桶川−新宿−新橋−桶川だが、2,500〜3,500ftで、ローリング・サークルをするように、山手線に沿って、何回も周回しつつ何度も旋回するつもりだった。

明るいうちの木更津行きでは、やたらに風が強かった。東京湾の波頭の凄さったらなかった。陽が落ち、西の空が残照のみとなっても、機体はガタガタ揺れた。風向は変わって、逆に秩父の山から、といった感じだった。機体は静かに飛んでくれず、とても、1/15などという(地上でさえ難しい)スローシャッターは切れない風の条件だった。だから、半分以上のコマがブレることを覚悟して、撮っていく。

グレイのビル群のグレイが、次第に消えていく。新宿や銀座の街路の明かりが、次第に明瞭になっていく。そのうち、ビルの窓の明かりが目立ってくる。西の空の明かりが、日没30分後を経過して以後だろうか、明らかに消え、地上には光の海が出現した。

東京上空の夜は、他のパイロットに乗せてもらった時から10年振りだろうか。相変わらず世界一の無秩序の光である。地面の底から光を放つのは、銀座、東京駅、秋葉原、新宿、渋谷、池袋。集中的に明るいのは、秋葉原だ。街路が浮かび上がるのは、銀座。

翻って、皇居、東宮御所、新宿御苑、明治神宮は、海のように、ずしっと沈む暗さである。時間経過と共に、繁華街と住宅地の差、都心からの主要放射路が目立ってくる。

東京TCAにレーダー・モニターをお願いして飛んでいた。ヘリが多いが、結構VFRで飛ぶ機体が多い。でも、みんなプロだろう。

久しぶりに熱中した撮影だった。プロビア400Fは、18本持っていたが、午後6時過ぎには撮り尽くしてしまった。「撃ちつくしちゃった。仕方ないから帰ろう」


スダチはGPSを参照することなく、HDGを桶川に向けた。漆黒の荒川を遡る。美女木で桶川アドバイザリーを呼ぶ。夜間照明施設のあることを示す、ビーコンの間歇的なライトが飛行場の在処を示している。これは都心からも高度があれば、視認できる。

北風。RWY32である。RWY32の延長線上(手前)に大宮市街がある。大宮も光があふれている。だから大宮へインバウンドし、そこでHDGを320°にすれば、桶川のRWYライトが視認できるはずである。滑走路は正対して見ることができれば、夜見ても滑走路の顔をしている。

国や県が管理する日本の民間空港は、たいていどこも恐ろしく明るい。しかし、桶川はプライベートだし、全体的に暗く、RWYの端がよく分からない。2時間も飛んでいると、QNHもだいぶ変化する。夜ってこんなに変わるんだ、と後で驚いたのだが、そんなわけで、接地のタイミングは、ココ!と思うのとややズレがあったが、まぁまぁ静かに降りることが出来た。そして、久しぶりの満足感に包まれた。

大利根JMGCのメンバーへ

東京の夜を飛ぶことは、資格を取得して、なかなか次の目標が見つからない、単純なフライトも少しは飽きてきたかな、という人たちの、新たな経験の付与策として、桶川からの夜のフライトは最適のような気がする。

一度、候補日を設定して、大利根から桶川に進出し、そこからナイトの練習に行くイベントを計画するのも面白いと思う。ボクは、正直言って、東京ナイトはやみつきになりそうなのだ。できれば、もう1回やりたいと思っている。

近隣の上尾だったか桶川には、ビジネスホテルもある。でも、家に帰ろうと思えば、帰ることも出来る。中澤さんや山本教官と相談し、G109Bやセスナ、パイパーを使ってJMGCナイト大会を計画したいと思うのだが、賛同者はいるだろうか。

さっき、東京の夜景空撮がラボで現像されて上がってきた。ラボのおねぇさんが、「こんな写真撮って、クライアントはいるの?」と聞く。お見通しなのがシャクにさわるが、「いるわけねぇじゃん。面白いからやってんだよ」

だけど、プロは人のためにしか飛ばないのが普通だ。飛べてあたりまえでもある。しかしアマチュアは、自分の領域を広げるために、自分で何か新しいことを、改めて、強いて、することができる。言い換えれば、自分を高めるシラバスを、他人ではなく自分で作ることができる。

これこそ、たぶん、自分のためにだけ飛ぶ楽しさであり、絶対的に金に代えられない、プロが知り得ない面白さではないか、と思うんだ。
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