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000205 JA09AW Dep. SEKIYADO 10:39−13:34 Arr. OHTONE 2h55m
朝8時に滑空場にショーアップするためには、仕事場に寄って機材やフライト・キットの積み込みもあるため、6時前に起きて出かける。

しかし、いくら早く到着しても準備は一仕事で、離陸は1時間後になってしまう。特に1ヶ月ぶりのフライトとなると、この冷たさではバッテリーも弱くなっていて、非常に始動性が悪いだろうと覚悟する。

手回しするエンジンのコンプレッションにはムラがあり、なおかつ異様に高圧なのが気がかりだ。何かが悪さしている。気筒内で結露があり、その水分がオイルに影響したのか、ピストンリングにカスが溜まっているのだろうか。エンジンも1,000時間を超えて老朽化をたどっている。注意が必要だ。

ま、1回燃焼すると正常に戻るはずだ。暖めてから再確認しよう。しかし、それにしても、なかなか始動しない。外部電源を繋ぐブースタ・コードを使うのだが、これも手製の物で十分な電流を流せず、うまく働かない。

冬の尾瀬


冬の尾瀬
結局、離陸したのは10:39であった。しかし、飛ぶとなるとこの冷気が空気の密度を濃くしており、非常に上がりがいい。関宿のRWY18Aを離陸滑走し、高圧線のところでクロスウィンドに入ったのだが、フルロードにもかかわらず800ftもある。ライト・ダウンウィンドからのデパーチャーでクルーズ・ピッチに変更し北上する。もう、男体も赤城も、くっきり見えている。

そして、活発なサーマルを感じ、それを拾い、上昇するより前に行く意識で85ktの高速を維持して巡航するが、5nm北上したあたり、利根川からの江戸川分流点に達すると、もう3,500ftもあった。冬を実感する。

視程がよく、地点標点はいくらもあり、迷わず真っ直ぐ尾瀬を目指す。渡良瀬遊水池、足尾の南、皇海山(すかい)の南、武尊(ほたか)の北を通っていく。地表は無風に近かった。だが、ここらから風が強い。向かい風だ。時折ローターに遭遇する。結構きつく揺れる。

離陸後約1時間で8,500ft、片品村の北に至る。手前にある大行山(1,772m)、荷鞍山(2,024m)などが尾瀬を視認するのを阻んでいたが、この高度で接近していくと尾瀬ヶ原を視認できる。真っ平らの雪原が、山々に囲まれてその底にある。

が、ストレートに尾瀬ヶ原の上空には行かず、燧ヶ岳の北に回る。尾瀬ヶ原を西と東から挟むように位置する燧ヶ岳(ひうち2,346m)と至仏山(しぶつ2,228m)を入れた1コマを撮りたいからだ。

尾瀬沼が氷結し白く雪を被っている。がその雪もきっと薄いに違いない。その周囲の木々には色があるからだ。

ここらは分水嶺である。至仏山の西斜面は利根川源流部といってよい。一方その東斜面を流れる水は、ゆっくりと尾瀬ヶ原を伝い、燧ヶ岳の脇を通って三条の滝を落ち、只見川となって日本海へ流れている。文字通り、ここは境なのだ。

だが、水の分岐点であるのみならず、気象の境界でもあるようだ。一面真っ白なのは尾瀬ヶ原、尾瀬沼、燧ヶ岳、そして至仏山といった、高いか平らな目立つ存在である。

振り返れば日光白根は山頂部のみ冠雪の様相で、周囲には地表も見えるのだが、尾瀬を挟んでさらに北に位置する平ヶ岳(ひら2,140m)は雲に沈んでいた。そしてその北側は延々連なる雲海である。雲の底では、いまも降雪があるに違いない。

尾瀬のすぐ北には影鶴山がある。これ以北は実際に雪の濃さが異なるのだ。ゆえに尾瀬未満の南は晴れて、この季節の太平洋気候であり、尾瀬未満の北は、曇って日本海気候なのである。

平ヶ岳の頂部は文字通り平らだが、微かな高度差で雪に埋まる木々の様相が異なることが分かる。そしてそれは、山頂部を過ぎていった高速の風と、それに抵抗したであろう木々が作って見せた乱流の痕跡である。ここにも流体力学がなす表情がある。

1時間ほど8,500ft〜10,500ftにオンステーションして、220フィルムを10本消費した。平穏な空ではあったが、この高度ではやはり風強く、山頂部のクローズアップを撮る場合など、ボールゲージは滑っていないが、明らかに流されていることがよく分かる。帰路、GPSによる対地速度は、高度8,000ft、計器で85ktのとき、135ktであった。

遠く、浅間も北アルプスも視認できる。2月5日の尾瀬は最高の日和であった。
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