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981007 JA09AW Dep. FUKUSHIMA Skypark 09:46 - 11:25 Arr. FUKUSHIMA Skypark 1h39m
ついてない山がある。

早池峰、飯豊、朝日など東北の山々は、その筆頭だ。関東から飛んで片道1〜2時間だが、4度出かけて4度とも空撮できなかった年など、徒労感はとても大きかった。「晴れときどき曇り」という天気予報は、明らかに平野のものでしかなく、山は別立てで考えなければならない。こんな日は、いまいましくも山頂部のみキャップクラウドを被っている。

数年前、福島飯坂に農道空港ができた。本来の小型機による農産物輸送など、コストの点で誰も期待しないが、飛んで行くには楽しい飛行場だ。大空港と異なり、管理する職員自身が小型機パイロットで気心が分かり合えるし、温泉もある。そんなことから小型機仲間と機体を連ねて合宿に行ったのだ。そして宴会の翌朝、ありえないような快晴に遭遇したのだった。ならばと朝一番、ストレートに飯豊に向かった。

この山の姿は、上がりきった安らぎというか、若いうちに苦労して人生を歩むと豊かな風格を伴う老人になれる、といったことを物語るような気がする。

飯豊山


飯豊山

すなわち、主稜部は比較的なだらかで、針葉樹ではなく偽高山帯植生の草原が多く、どこか優しい風貌をもつが、谷に目をやると、山腹は浸食により結構急峻なのだ。夏であればそこに、「石ころび雪渓」をはじめ豪雪の山を物語る万年雪のポイントも目立つのだが、10月ともなるとそれも細り、もう次の雪を明日にも迎える予感がする。

山容と同様、「飯」であり「豊」であり、山名にも満ちるものを感じるが、山頂部の窪地に長く残る雪田の形が、飯を盛ったように見えるというのが由来だそうだ。また、飯豊は、麓の生活に密着した農事暦の山として仰ぎ見られてきた。山系北部の杁差岳も田植え農具から名付けられたというし、数多い雪渓の姿も田植え時期の判断に使われてきた。

名も姿も、どこか人のありようと不可分に思えるところが、味わい深いのである。
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