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030102 JA09AW Dep. Ohtone 10:33-14:29 Arr. Ohtone
新年1月2日は、初フライト本番。大利根を10時半に離陸した。
下総管制圏を突っ切らせてもらい、新年の参賀で飛行自粛の千代田区を避け、上野から新宿、調布から相模原と渡って、丹沢へ。
下総は地上視程20kmと言っていたが、上空では凄い視程。100kmはある。関東平野一円のすべての建物が見えるような日。工場が稼働せず、大型トラックなどの交通量がほぼ皆無といえる新年の数日だけの撮影条件だ。7,000ftの高空から、「これが東京」という、ボクにとっては新しいアングルが、いくつも撮れた。

丹沢の山系を入れて富士山を撮影していたら、次第に燃えてきて、富士山そのものに接近することにした。こうしたところ、魅惑の富士山だ。念のためAEISを通じて富士山頂の風を聞けば、310度の68ktの風とのこと。スバルライン駐車場上空8,500ftから斜面をなめて、さらに西側に出る。なかなか斜面風に引っかからなかったが、案の定、大沢崩れのやや北で強いヤツを当てて、8の字旋回6〜7回で、高速エレベーターに乗ったが如く、15,500ftへ。むろん停止しなかったが、エンジンでは、こうは上がらない。8,000ftを超えれば、ターボのないエンジンを装備したモグラならば、ピュアと少しも変わらない。100ft/min(これが維持できる最高高度がサービス・シーリング)さえも維持できたためしがない。上がろうと思えば、風しかないのだ。

富士山頂の写真は前にも撮ったことがあるが、今はあの測候所のレドームが撤去されている。新しい山頂の写真が必要だった。だから、とてもありがたかった。クライアントに使ってもらう写真は、常にカレントなものである必要がある。撮れないから、という言い訳はしたくないのだ。


山頂上空の真ん中から南東側は風下域で、どういう乱流になっているか分からないので、北西側に居続けることにする。で、310度の方向に一旦離れ、撮影アングルを設定して、ドリフトするように、カニの横ばいのように、山頂に接近して撮影することを繰り返した。

その山頂への接近速度の速いことといったら。1回のアプローチで、645判のモータードライブではあるが、どう頑張っても2〜3コマしか撮れない。山頂への接近速度はGPSのいうGSで140kt+、離脱速度は22〜27kt。時に16kt。

鶴岡八幡宮場


富士山


富士山


都心
こういう状況はなかなかダイナミックで、ちょっとは緊張したが、面白かった。また、小窓を開けて撮影するカメラを持つ左手の冷たかったことといったらなかった。マイナス15度。
次は、箱根、そして小田原松田断層、さらに1万ftを切らないように三浦半島の付け根に至り、房総半島を見越した三浦半島の全体像、追浜から横浜、羽田、そして東京を見越した東京湾西岸の全体像、高度があり、空気がクリアでなければ撮れない写真を精力的に撮った。

そして鎌倉でダイブ。2,000ft以下に落とし、「海を向く社」鶴丘八幡宮を撮った。
なぜ、この神社の参道は海とを直線的に結ぶのか。鶴丘八幡宮ばかりでない。塩釜の塩竃神社、日本平久能山東照宮など、海岸付近にある神社は海を向いている。そうでなくとも、参道は直線的に海岸とを結ぶ。これはどうしてか、必ず理由があるはずで、面白いテーマではなかろうか。
鶴丘八幡宮を手前に、海は逆光に光り、参道には参拝客があふれていて、やはり正月でなければ見られない1コマになった。

モニターする東京TCAは、航空測量会社の交信で忙しかった。正月は、土地建物の売買をする人がほとんどいないから、地籍などに関わる空撮は、この数日が鍵となる、という話を聞いたことがある。
2,000ftで八景島から富津へ東京湾口を渡り、大多喜に向かった。正面1,000ft差で次々に羽田にアプローチする旅客機が接近した。TCAとの交信が忙しかったが、全部視認できて助かった。風向をよく判断していないと、後流が心配だ。大多喜で撮りたかったものがあるが、細い谷の影になって撮影条件が合わず、大利根に帰投した。晴れた冬の午後は、十分すぎるほど風が強い。しかもクロス成分が大きい。

大利根では誰も飛んでいなかったし、とてもきわどい着陸だった。最後は釈然としないが、空撮には満足したので、よしとしよう。
翌日、富士山のGPSデータの詳細な数値を丹念に見てみて、驚いた。
ま、GPSの高度情報は誤差が大きいのではあるが、上昇速度の瞬間最大値は、12時19分8秒から同19秒の間の11秒間に149mのゲイン。換算すると、13.5m/sec、すなわち2,667ft/minになる。

富士山は独立峰で上昇風帯は極めて狭く、探し方にミスもあるから、上がろうと思って最高高度へ上がりきるまでの平均値は、こんな値にはとてもならないのは当然で、いいところ500ft/min程度だった。

航跡を見ると、こんなに8の字は大きかったっけ、という感じ。なかなかアップドラフトにひっかからなかったせいだ。さらに富士山も上部の円錐の直径はかなり小さく、上がり場所を探しつつ、山肌との間合いを割に大きくとったからだ。でも、何が現れるか分からない極限的な空と風だろうから、接近して小さく回ったら、何があったか分からない。これくらいが最大限の努力。

さて、グラウンド・スピードの瞬間値で最大なものは、386.1km/h。これでは、1回のアプローチで3コマしか撮れないのも当然だ。それは、12時18分35秒に高度4,475mで記録されたもので、そのときの方位は183度。しかし、その12秒前には、同じ高度4,475mだったが、方位022度で、たったの12.1km/h。止まっていたに等しい。山頂部からの南への離脱時も、しばらくGSは300km/hを超えていた。

昔、同じG109Bで、強烈な追い風の中、群馬県の中之条上空14,000ftから関宿上空10,000ftを約15分で帰ってきたことがあるが、この距離は100kmと少しある。計器で100kt程度でも、GSは、やはり400km/hくらいになっている。自分でも時計の見間違えかと思うほどのギョっとする値だった。やはり、メリハリのある、知られざる風は、結構存在するようだ
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