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 (2)

八尾から1時間半余で飛騨到着。到着5分前に市川君から電話。それぞれに関わる人のフライトを推し量っている。
「OK、1時半に飛騨を離陸する。空対空の無線で、様子を見て会合点を決めよう」

食事をしても、一休みできる時間があってよかった。

そこで、名古屋の管制情報にフライトプランをファイルした。プランは、日没ぎりぎりまでのつもりで、13:45離陸の5時間。目的地・大利根、途中、パッセンジャー・ストップ1回、at 飛騨、「0530」。燃料・6時間(どうせ、Px Stopのおり、20Lガソリン缶1缶2缶を補給することになるのだ)。

プランはすっと入ったが、名古屋のCABへの電話を切った途端、思い出した。「あ、イケネ、5時間じゃぁ、日没を過ぎちゃう」
エンデユランスは4時間20分に新たに変更した。

LS8 "KZ" & "AA"


LS8 "AA"
まばらに雲がある。北アルプスの東西断面にみる雲は、松本盆地サイドで10,000ft未満。常念岳あたりで11,000、中に入って穂高あたりでは12,000、西側ではさらに高い、階段状の様相だ。奥に入れば入るほど条件はいいのか。

谷渡りしてきたLS8を視認し、見越しをとってジョインナップ。
大滝山の東で旋回して高度を回復させる2機のLS8に交じって、旋回。時にインクラウドしそう。

「じゃぁ、行きましょうか」とリードするMac。丸ちゃんが僚機としてついていく。こちらは3番機位置につき、右エシュロンで穂高に接近する。

時に、丸ちゃんの声が引きつる。初体験の北アルプス。奥へ、奥へ、と入っていくのだ。風景に圧倒され、山の深さに退路を考えさせられ、足がすくむのかもしれない。

「穂高の南端を西に行けば、飛騨(農道)のスリバチに入れるから」
「ううう、穂高って、どれ?」声がうつろに聞こえる。
「ほら、目の前の大きい山だよ」
「・・・・、ああ、これ!」

時々、上昇率を「プラ1、・・・・コンマ5」とかコールしあいながら、西穂、前穂、涸沢岳、そしていくつかのカールを巡る。
北上して槍ヶ岳。周囲を1周したものの、うまく背景に取り込めなかった。

槍から、双六岳、黒部五郎岳と尾根を伝い、北アルプスの裏手に出る。
ここらで丸ちゃんの高度維持にやや力がなくなってきた。緊張して、手足が勝手に萎縮しているのかもしれない。上がるはずのところで上がらないようだ。

だが、黒部五郎あたりは飛騨への滑り込みが楽に出来る場所だから、Mac市川は「丸ちゃん、ちょっと待っててね。もっと西へも、北へも行けそうだから、ぼくは行くから」と言い捨てる。北アルプスを脱し、白山や能登へ、などというイメージを想起させたからか、ぼくも丸ちゃんも驚いた。

有峰湖を左手にみて、Macをチェースして薬師の稜線を北上。正面に立山の室堂平、右手に黒部湖が視認できる。

もう30分ないし1時間早ければ、立山から東を向き、黒部湖を横断し、爺ヶ岳、鹿島槍、五竜、唐松と渡って、白馬まで行けただろう。しかし、次第に時間が気になってきた。
飛騨に泊まるのならいい。この日は一旦着陸後、右席伊藤さんを降ろしたあと、大利根に帰らねばならないのだ。

黒部五郎の附近で置き去りにした丸ちゃんのことも気にならないと言ったら嘘になる。優秀なパイロットだが、北アルプス初体験は初体験なのだ。
それに左サイドからしか空撮できない。北上する場合は、午後は常に逆光になる。背景条件がいいだけに、それも辛い。
「南下しようぜ」

視程はいまいちだが、TP09でお伝えしたアルプス最深部、それをピュアグライダーで楽しんでいる。確かに、また半歩前進したという実感がある。
山の風景のスケール感は、この場所にしかないものだ。

黒部五郎のあたりで、別れたままになっていた丸ちゃんを捜す。山中で「コンマ4」とか「この辺が頭打ちかなぁ、11,000」とか言っていた丸ちゃんは、ぼくたちの頭上高く、にいた。高度を揃えるのも手間だし、そのまま笠ヶ岳、焼岳とまわり、ぼくたちはLS8と別れた。

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