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FLIGHT LIFE
FLIGHT LIFE 投稿文
FL07


視線の先に
助手が、ウインチマンと同じものを見ている。
視線の先にあるのは、曳航中のグライダーだろう。しかし彼女は、何を思い、誰の視点に立って、グライダーを見つめているのだろう?
助手とは、ウインチ助手のことで、仕事の名前であり、それをする人のことでもある。

作業は単純だ。ウインチは、二本のワイヤーを連続して引けるように出来ている。だが引く前に、二本のワイヤーが重なってしまった場合にそれを直す必要があるのだ。仕事はこれを行うだけで、後はひたすら時間が余る。
飛ぶことに熱意がないものにとって、ウインチ助手はひたすらに暇でつまらない仕事である。曳航は延々と繰り返されているだけだ。だが、そう見えるのはグライダーからも、ウインチからも外にいる、観客の視点だからだ。
グライダーが、さっきと同じ軌跡を描いていただろうか。動きのテンポはどうだ?
風に変化はないか。無線の内容。ウインチマンの操作は直に見ることが出来る。
自分よりうまい人のフライトは、いろいろなことを教えてくれる。パイロットとしての技量は、何を見るか、そこから何を判断するかに掛かっている。だから、それを学ぶ者は、パイロットの視点として、操縦者が何を見ているのかを考えるのだ。ウインチマンになりたいものも然り。同じものを見ようとする。
視点の先に、何があるのか。何を見られるのか。それは空を飛ぶことによって得られる、一番重要なものかもしれない。


『333準備良し』
『333大野ウィンチ、土手索準備良し、出発用意』
航空部員にとって、不思議なほど心地よく耳に響くこの無線。ウィンチマンは、このやりとりを終えるとゆっくりアクセルを踏み、索のたるみを取る。
『333出発!』
独特の緊張感と爽快感を併せ持つこの出発の一声を合図に、ウィンチマンはアクセルを踏み込み一気にウィンチを加速させる。カバーがかけられていない剥き出しのエンジンがうなりを上げ、時速100kmという高速で索を巻き上げる。
まるで凧のように、1km先で機体がふわりと浮き上がる。数人がかりで移動させるあの機体が、こうも身軽に離陸するのか。約30秒かけて、機体はウィンチの上空に到達する。パイロットの命を預かったウィンチマンの脚が、少しずつパワーを緩める。リズムよくその数秒後にはグライダーが離脱し、水を得た魚のように、空へと泳ぎだす。
ウィンチマンはフライトと同じくらい経験がモノを言う。助手と2人いささか寂しくも感じられるが、大学航空部の静かな花形である。

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