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名古屋に帰着すると、もう日没までに大利根に戻る時間的余裕はなくなった。福井の燃料屋がすぐ来てくれれば、十分帰ることが可能な時間であったが、仕方がない。

駅近い高級ホテルがインターネット予約だと案外安価なので、そこを選んで泊まった。

撮った写真を現像したい。が、ノートパソコンのACアダプターを大利根に停めた車の中に忘れてきて、バッテリーは枯渇している。
写真というのは、見たくなったらどうしても見たいもので、ジリジリする。このところずっとファイルしているGPSのトラックも、ダウンロードしないと順次古いデータが書き換えられていく。これも取り込んでおかねばならない。
駅前にビックカメラがあるので、閉店前だが覗いてみた。純正ではない使用可能なAC電源があったので、高いが買った。液晶画面に写真が現れて一安心。

明日は早いうち帰還できるだろう。が、誰か大利根で名古屋まで出っ張ってきて、一緒に帰る人はいないか。新幹線なら東京発21時過ぎでも名古屋に来れる。ホテルにチェックインしてすぐクラブハウスに電話したが、残念ながら手頃な人はいなかった。
後から分かったが、八尾から龍ヶ崎に双発高速機で乗りつけ、大利根でグライダーを練習するクラブ員がいるのだが、その人の帰りに名古屋まで同乗し、つきあってもいいと思った人もいたようだが、こちらから電話するのが30分ほど遅かった。
それにしても新たな時代なのか。飛騨でも、福井でも、大利根でも、グライダーに関わりを持つために小型飛行機が使われている。

帰路は1人で軽いから、080でクルーズクライムし、ひたすら真っ直ぐ帰ろうと思った。たぶん、南アルプスで10,000ftに達するはずだ。

0803にRJNAを離陸。恵那山まで約70km、約20分。その恵那山で6,000ft。えらく速い。GSは300ft/minを維持しても、200km/hを超えている。非力なモーターグライダーであるのに、ざまーみさらせ、という感じ。後でバロを見ても、右肩上がりに直線的に上昇している。
でも、恵那山を越えた途端に、ローターに揉まれに揉まれた。バロがグイと下がっている。

視程は良くない。6,000ftを超えてもヘイズの中だ。先に10,000ftの南アルプスが見えればもう少し上昇率など勘案できるのに、薄ぼんやりした連続する山容が見えてきても、あれが超えるべき南アルプスという自覚がない。
8,000ft弱で、大沢岳、その先に赤石岳がそびえ立った。
1人で軽いし、風は強いし、リッジを使ってあっという間に飛び越すぞ、と思ったが、これは重大な浅はかさだった。山に接近するにつけ、風上側だというのに無茶苦茶揺すられる。ああ、1人の搭乗で良かった、と思った。

尾高山(2,212m)から奥茶臼山(2,474m)につながる南西−北東方向の尾根の風上側に居続け、しかし、かなり揉まれて上がっていく。尾根が切れ、こりゃヤバイ、とトラックにキンクを作るように、風上に回るように旋回して南下。すると偏流45°もあろうかという蟹の横ばいのようになり、怖々と大沢岳から兎岳、聖岳の稜線を伝った。

上昇力はそこらのウェーブ顔負けではあったが、南アルプスの稜線を越えたら怖いな、と予感した。コントロール出来ればいいが。

奥聖岳(3,013m)脇では11,000ftを優に超えた。不思議なもので、西風はむろん西風だが、それが北西なのか南西なのか、よく理解できないほどに緊張している。ただ稜線が機首の向きとは関係ない方向で動いていく。

この谷がいやらしいと思った大井川を越え、独立峰笊ヶ岳(ざるがたけ2,629m)。これを抜ければ甲府盆地だ。思い切って高度を下げようか。しかしまぁ、160kt、300km/h近いGSが出ている。名古屋離陸後40分少々しか経っていないのだ。我慢して10,000ftを行くか? 改めてチャートを見ると、名古屋−大利根間の南アルプスの位置は、全く名古屋に近いのだ。関東の守備範囲だと思ったのだが、まだ先がある。笹子を抜けるまで2度ほどローターに遭遇したが、速さの魅力に我慢した。

横田APPにコンタクトし、平野に出て7,500ft。
下総管制圏を滑走路北側アビームで、上空から突き刺すように入れてもらって、大利根帰着は0934。所要は1時間31分であった。

クラブルームにシゲちゃんがいて、「風、強かったでしょ」と言った。
実際強かったが、実態を予測した人と、しなかった人がいる。しなかったというより、できなかった、が正しい。RJNAには気象台はないが、もう少し慎重にすべきだったと反省した。


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